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エコキュート開発秘話

驚異的なエネルギー効率を達成した給湯器開発秘話
                   出典 ㈱デンソー

1993年夏、デンソー冷暖房開発1部はカーエアコンの冷媒の代替えフロンへの切り替えに、
膨大な車種のモデルチェンジへの対応に追われていた。
その時期ノルウェー工科大学の教授が著した1編の論文に
「環境保護の観点から冷媒には代替えフロンより自然冷媒の二酸化炭素を」という研究が記されていた。

その時は、「多忙な時になんと浮世離れした話だ」という感想しかなかった。
しかし論文に共感した担当が教授に手紙を送った。
これがきっかけとなり教授との交流が始まる。
そして環境問題に関心の高い欧州の自動車メーカーから
「次世代の冷媒をどう考えるのか」という要望があり、にわかに自然冷媒の存在が重みを増した。

1995年、教授から自然冷媒に関する基本特許や実験装置を借り受け冷媒用ガスの基礎研究が始まった。
CO2、ブタン、プロパン他などを環境性や安全性の側面から評価していく過程でCO2の優れた特性が浮上した。

1.CO2は地球温暖化係数が特定フロンの8100分の1、代替えフロンの1300分の1と環境負荷が極めて低い
2.不燃性ガスで無害のため万一漏れても安全
3.冷暖房の効き目を実感する即効性に優れている
4.化学工場で二次的に発生するCO2を再利用できる

しかし冷媒を単純にフロンからCO2に入れ替えれば済むほど簡単なことではない。
フロン系冷媒は10気圧で気化、液化を繰り返して冷暖房を行うが、
CO2は気体のまま100気圧で圧縮・減圧が必要になる。
100気圧とは気体と液体の境界がなくなる「超臨界」状態をつくる圧力で、
カーエアコンのような過酷な使用環境で安全に作動させるのは至難の技だった。

新型カーエアコンの開発は日米欧の自動車メーカーと連携しながら取り組んだ。
1998年、デンソーの開発陣はノルウェーのオスロで開催される
「自然冷媒国際会議」で開発の一部を発表したが、
客席で驚きをもって講演に聞き入る一人の日本人の研究者がいた。
(財)電力中央研究所(以下電中研)の自然冷媒を研究する先駆者の一人で
次世代給湯システムの原理と同じで、デンソーのレベルは高いと感じた。

電中研では家庭用最終エネルギー消費の3割を占める給湯を効率化するために研究を続けていた。
国際会議で発表されたデンソーの技術を紹介すると東京電力で構想が生まれた。
「力っを合わせ場給湯革命を起こせるかもしれない」

1998年、デンソー特定開発室は東京電電力と電中研の来訪を受けた。
「自然冷媒によるヒートポンプ式給湯器の共同開発」の申し入れだ。
その構想を聞くうちに
「なるほど、ヒートポンプ式ならお湯を温める主役は空気で、
電気はあくまでサポート役だから消費電力は格段に抑えられる。
エネルギー効率の高いCO2冷媒を使えば効果は大きいだろう」

こうして異業種3社が手を結んだ共同開発プロジェクトがスタートした。
課せられたテーマは数々あり、超臨界に耐える高度な密閉技術や
小型化・夜間運転の静粛性も必須条件だ。
そして何台もの試作品をつくり、北海道から沖縄までモニター家庭で検証を繰り返し
電力業界の共通商品として「エコキュート」と命名され2001年5月に発売開始となった。

エコキュートはさまざまな機関から評価された。
2003年ミラノで開催された気候変動枠組条約国際会議(COP9)で
エコキュートがプリウスなどと共に
日本が誇る温暖化防止技術として紹介された。




by dandaneco | 2015-08-06 22:01

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